小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

ファイブスター物語/FSS/F.S.S.:女の決意、男の決意。それを見守るファティマ達

 3〜4月号まとめて。
 ◆女達
 ムグミカがラーンに残らなかった事により腐敗してしまった神官や行政官達は目先のことしか考えていないし、もしかしたら詩女という存在について「お飾り」程度に思うようにさえなってしまったかも知れません。でも、フィルモアの件をなんとか乗り越えなければならないこともあり、神官達はまだ泳がせておかねばならないでしょう。それらの問題解決の為にはフンフトが詩女を続けなければなりません。眠り続けているマグダルでは今迎えている難題を乗り越えられないでしょう。何よりマグダルをラーン留めてしまえばボスヤスフォートに狙われる可能性があるので、何とか逃げ続けなければなりません。そしてマグダルの眠りの秘密も明かされます。眠っているゆえボスヤスフォートの手から逃れることが出来ていると。フンフトの思慮の深さ、そしてムグミカは命と魂全てをかけてボォスの明日への道を作ったのだと深く思います。
 11月号ラストでおっとろしー目で睨んでたラーンの騎士。その二人の名前が明らかになりました。デザインズ4ではドヌーブのみ出てますね。神官達が腐りきってる中でもドヌーブ(どうしてもドヌーヴと書いてしまうなあ。クセで)達はフンフトを信じ、密かに動いています。彼女達は今でも詩女の力を信じ、フンフトも彼女達を頼りにしているのでしょうね。「女の結束力」ここにあり、って感じです。また、もしかすると、フンフトがハスハントのどこかでひっそり暮らしていた頃に、元詩女の警備としてラーン支隊の誰かがフンフトの側に居て彼女の言動を見聞きしている為、彼女が「神官達に担ぎ上げられ、大国にいいようにされる女」ではないことを理解してるのではと自分は考えました。
 ◆髪を切る女、唇を噛む男
 巴が追っていたこともあり、マグダルとヘアードの容姿は割れているのでしょう。元々国家でそれなりの地位にいたのですし。ですから少しでも目立たぬよう、容姿に手を加えることは仕方の無いことでしょう。けど、このシーンにはヘアードの決意がさらに強まったことを示していると自分は感じます。ラーンに着きさえすればマグダルは大丈夫だとそれまで思っていたけれど、そうではなくなった。いつ落ち着くか分からない混乱の中、逃亡の日々を送らねばならない……でも「私も……御いっしょします!」と。ヘアードのこの一言、そして髪を切るという行為は、先の見えぬ道をマグダルを守りながら歩き続ける。その決意に一点の曇り無しという気持ちの表れだと。
 次のページでヘアードが頬を赤らめているのは、自分の歩むべき道は決まった、それを成し遂げようという高揚感のようなものもあると思いますけど、やっぱり好きな男性に自分の潔さ、勢いをみせてしまったと、一段落ついてからちょっと気恥ずかしく感じたせいでしょう。お堅いとドヌーブにからかわれていますが、ちゃーんと女心はあるんですよん、ってことですね。
 そんなヘアードの「とてもシンプルな女らしい潔さ」にランドは胸を打たれたのでしょうね。
 バッハトマを倒す為に個人的に動こうというのがランドの当初の気持ちだったと思います。マグダル保護はその一環でしか過ぎなかったと。そもそも長年A.K.D.の魑魅魍魎うーじゃうじゃというような政(まつりごと)を見、そのなかで公爵として、ミラージュの一員として求められる行動を彼は取ってきたと思います。彼の行動のベースにはA.K.D.というものがあったと自分は考えます。
 だけど、ヘアードが彼の前で見せた行為は、一人の少女……確かに次期詩女であり剣聖の忘れ形見でもある重要な人物ですが、国のサポートどころか、GTMも無くファティマも居ないという、騎士にとって非常に心細い状態で少女と共にあてのない、先の見えない逃避行の決意。ミラージュを退団したというものの、A.K.D.のサポートを受け、ティスと共にある自分とは状況は全く異なります。
 そしてランドはA.K.D.という地盤の上で動くことを止め、ミグノシアに足を付けて戦うことこそ自分が成すべき事だと心に決めます。デザインズ1で、ランドはとてもジェントルであると書かれています。単行本4巻でカイエンがアトロポスに言っています「騎士ってのは君主と……美しき婦人のために戦うもんだ…」と。ランドが既婚者かは分かりませんが、短くは無い期間共に居た間に、ヘアードの言動に心を動かされたことは間違いないでしょうね。
 それにしても、4月号62pからのヘアードの言葉と表情。確かにお堅い女性らしいといえばそうですが、彼女のランドに対する思いを彼女としては精一杯伝えたっていうのが感じられます。「殿方に服を頂くなんて初めてです。うれしかった……」そう言ってランドを見る彼女の目はとてもせつないですね。服をもらっただけでなく、思い出を有り難うと伝えたんだねと自分は感じます。ああもう、いじらしーなー。ドヌーブも思ってるでしょうけど、えいえいっ、早く一緒になって幸せになっちゃえー!
 でも、その為には魔導大戦が終わらないといけないんですけどね。恋の障害としてはでっかすぎますぜ。
 ◆マスターの喜びは私の喜び
 単行本12巻119pのティスもそうですし、2月号58pのナールーシャも、マスターが騎士としてでなく、普通の人と変わらぬ反応……それも嬉しい反応をしたとき、とてもいい笑顔をみせるよねと思うのです。ファティマは戦闘兵器。それは揺るぎません。しかし、繊細な感情を持っている事もまた事実なのです。人間であっても、自分が大事に思う人が嬉しい時、自分の事の様に嬉しく感じると思います。ファティマ達もまた同じなのだと。
 ◆えっ? 何故ヘアードはあの時……
 ヘアードがあっさりやられて失神というか死亡判定喰らってしまったのは何故? という話ですが、デザインズ4の感想のGTMの項目でも触れたように、GTMの動きは一瞬なんですよね。それを頭に置かないといけないと思います。様子を見に道路に出た民間人に囲まれ、しかも腕に抱えたマグダルの命を最優先して、騎士とファティマが操作するGTMのビームの着弾点を見切って逃げるのはあれで精一杯だったのでは? コマを目で追うよりもずっと速くシーンは動くことは、単行本7巻20pで説明がありましたね。
 赤十字スタッフの持つ機材で生命反応ゼロ判定だったのに、ティスの診断では大丈夫だったのは、首のファイブ・スターの加護、いや意思なのか……
 勿論、その後を読むと分かりますが、マグダルは安寿と厨子王の物語のように、今度はヘアードとも別れることになってしまいます。舞台は急に宇宙へ。宇宙海賊が出てきました。マグダルがカーマントーで辛い目に合うというの話のスタートになるのでしょう。
 ◆その他
 4月号の本編表紙で、デザインズ1のミラージュマシン型式に変化があった理由が判明します。グリットだからG型なのね、と。クロスは自分が一番好きなMHで、自分が騎士なら間違いなく選びたいMHです。勿論雄型ですけど。パワーはあるけれどバランスが取れて扱いやすいかなって所が。グリットはクロスのイメージをちゃーんと引き継いでいるすばらしいデザインだと思います。全身像はよはよ、って所。あと、このイラストのポストカードがとらのあなの特典にならないかなーと期待。
 クールというかさっぱりとした表情のジャカルナ。ザクっぽいパイプライン? がいいアクセントのスーツですね。そして、やーっとやーーーっと、出てきたメルシュ。ウモスの国体はあんまり良い印象じゃないのですが、そんな中でレスターやメルシュのような好人物がそれなりの地位にいるというのは不思議なものです。そうそう、レスターは青銅騎士団で隊長だったというのも今回明らかに。へらへら〜モードだったカイエンにアウクソーの重傷という大きな痛手を負わせるほどの人物ですからただの騎士では無かったという事でしょうね。さておき、クールなジャカルナにイイカンジのメルシュ。うーん、かっこいいオサーンが沢山出てきていいですねえ。
 さておき、NTが29周年ですか。今年で自分は46歳になります。8年間の連載中断中は、F.S.S.や映画「花の詩女」関連の記事がない限り買っていませんが、長いお付き合いだなぁ……。セーラー服着て、学校帰りのバスの中でワクワクしながらF.S.S.の第1話を読んだ時の事は今でもはっきり覚えています。10年近く前まで創刊号から全部持って引っ越ししたりしてたのですが、流石に限界を感じ、切り抜きだけして(それでも段ボール一箱分)持っています。本当はそれをスキャンしていつでも見ることが出来るようになればいいのですが、自分の持つ多機能プリンタだとNTのサイズは大きすぎて無理なんですよね。やれやれ…… 連載再開1年になり、机の端のブックスタンドで固めてあるNT誌も結構な量に。要らないページは切って捨てているんですがそれでも、ね。
 13巻分まであとどれ位連載が続くのか分かりません。12巻並に長くなるのかな?