「池袋乗用車暴走事故」:飯塚被告はデータに真摯に向き合って欲しい。
個人的に「池袋乗用車暴走事故」裁判の焦点は「アクセルとブレーキの踏み違い」というポイントであって欲しいのです。現行車の多くが様々なデータを記録しています。万が一の時にはその時に「車の様々な所がどうだったか」をスゴイ早さで記録するのだそうです。
しかしなぜ、データが提出されてもそれを飯塚被告はかたくなにそれを認めないのでしょうか。
◆池袋乗用車暴走事故 飯塚被告「車の不具合、再起動で元に戻った」【詳報・被告人質問】:東京新聞 TOKYO Web:https://www.tokyo-np.co.jp/article/110916
松永さんが「あなたはブレーキを踏んだのは絶対に正しいと認識していますか」と尋ねると、飯塚被告は「はい」と即答した。
<中略>
さらに松永さんが「電子制御のアクセルとブレーキが同時に壊れたから発生したという主張だと理解してよいですか」と尋ねると、飯塚被告は4秒沈黙した後、「電子制御は時々、不具合が起こることがあって、私どもも経験をよくすることですけど、再起動すると元に戻って正常に機能することがある。そのような事例ではないかと思っています」と述べ、警察による事故後の調査で不具合が見つからなかったことと矛盾しないという趣旨の主張をした。
◆池袋暴走事故 トヨタ「車両に異常認められず」 飯塚被告の「不具合」主張に反論 :東京新聞 TOKYO Web:https://www.tokyo-np.co.jp/article/111940
トヨタ自動車は21日、2019年に東京・池袋でトヨタのハイブリッド車「プリウス」が暴走した事故について「車両に異常や技術的な問題は認められなかった」とのコメントを発表した。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長飯塚幸三被告(90)が車両の技術的な欠陥を主張していることに反論した。
暴走したプリウスには走行時のデータを記録する仕組みがあり、今回の事故でも残っていた。トヨタは捜査当局の要請に基づいて事故を起こした車両の調査に協力した。この事故に関しトヨタがコメントを出すのは初めて。
確かに、裁判も人間が行うことです。そのため様々な感情が飛び交うことは自然な事だと思います。とはいえ、飯塚被告が運転していたプリウスに残されたデータはデジタル。人間ではありません。機械だから……人間もそうですが、100%はありません。しかし、飯塚被告の車両に残されたデータをメーカー側が調査しても、飯塚被告は認めようとしない。
これは飯塚被告のバックグラウンドに関係があるのかなと個人的に思いました。Wikipediaによれば、「東京大学工学博士。専門は計量学。測定器誤差と形状誤差を分離して真円度・円筒度測定ができるマルチステップ法の開発者。」
自分の個人的な……そして理系素人の憶測ですが、「機械/機器/データ等」は飯塚被告にとって「観測対象」であって飯塚被告の「下位」に位置する存在。自分のなした事よりもそれらが「上位」に来ることはないという気持ちがあるのかなとぼんやり思ったのです。
そして飯塚被告のが持つ様々な肩書きもまた「データで負けを認めたら、その肩書きの価値が下がる」と思ってるのでは。
それゆえ、データについては決して認めず、
◆【特集】池袋暴走事故の遺族 法廷で直接、飯塚被告に「質問」を投げかけたが…被告の答えは?(読売テレビ) - Yahoo!ニュース:https://news.yahoo.co.jp/articles/f874a378f478336ab3e71246a0aec8c2a6c10d97
松永さん:アクセルとブレーキを踏み間違えた可能性を当初は否定していなかったが、なぜ(完全否定に)供述が変わったんですか?
飯塚被告:遺族心情に寄り添えば「刑が軽くなる」と説明を受けたので、そうなった。
<中略>
「道義的にも法律的にも責任があると思うか」との問いには「2人を亡くならせたことについては非常に申し訳なく思っています」と答えた。
と、感情のやりとりで裁判を終わりへ導きたいと考えているように自分は感じました。
今回の事件で心を痛めているのは遺族の皆様だけでなく、すくなくない技術者や研究者等の方々もそうなのではと自分は想像します。データを揃えて上役に提出しても認めて貰えない。また、上役が出したデータにミスを見つけ指摘してもかたくなに認めて貰えない。そういう事はあると思います。
肩書き、プライド、年齢……きっと上役が持つ色々なものが「それを認めない」。
それでも、突きつけられたデータに真摯に向き合う事は大事だと思うのです。
理系の話だけじゃなく、現実のあらゆることで「何度何度やってもうまくいかない」って事はあるかと思います。そんな時、自分が行った事を周囲の人に聞いて頂いて「ここがダメかも?」「こうしたら良いんじゃないかな」というアドバイスに耳を傾け……なにより、そういうアドバイスを頂ける事に感謝し、そしてまた作業を練り直す。歳を重ねてもそういう真摯な気持ちを忘れたくないと思いますし、ジェネレーションギャップはビックリするけど、それでも若い世代の方や異業種の方と交流し、今まで見えなかった「!!!!!」が見える可能性を大切にしたいと思うのです。
「池袋乗用車暴走事故」の裁判はいつか結審するでしょう。
しかし、根拠がしっかりしているデータを認めてもらえない技術者や研究者等の方々の「戦い」はこれからも続くと思います。この事件の裁判のように大きくメディアに取り上げられることも無く、守秘義務のためSNSなどで愚痴ることもできず。
自分はそんなケースが少しでも減るように、人々が互いに知恵を出し合い、良い方向へ明日へ、未来へと技術や文化を磨いていって欲しい。そう祈ります。