小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

ファイブスター物語/FSS/F.S.S.

 FSSのキーワードで少なからぬ方が見に来てくださり、ありがとうございます。ネトゲと病の話が殆どで、あまりFSSの話はないのですが・・・。そうですね、少しは月刊プレビュー以外のことも書いてみましょうか。

★ファティマというもの
 キャラクターズの4巻でも永野センセが書いてらっしゃるように、運命の三女神やフローレスクラスのファティマは別格なんだヨ、ということが、物語が進むにつれ出てきていますね。2巻の終わりで既にブーレイ(フィルモア)の騎士のファティマに対する扱い方について触れてはいますが、それよりもやはり他のファティマについての・・・特にウリクルの死があったりして、ファティマが持つ本来の「目的」というのがあまり語られていません。また、帰還したブルーノのパラーシャに対する想いの描写で先述のことはやや薄れてしまいそうになります。やはりこの頃はまだ、ファティマは騎士と深い絆で繋がれており、その妖精のような肢体と美しさで読者を魅了する存在というイメージが強かったと思います。

 ですが、10巻のレーダー皇帝と町の言葉。そしてバーシャの「MHを駆る者が騎士である」という言葉。ここら辺からファティマが「兵器である」ということがより強調されていっているような気がします。そして04年5月号連載の回におけるアイシャのセリフ、「ファティマを兵器として扱えぬものは」のくだりでヨーンはムカつきますが、しかし自分ひとりでは今の状況を打破できないというのも分かりつつあるという感じですね。まだ彼にとってファティマ・・・バーシャは心から拭い去ることの出来ぬ大きな存在ではありますが、パルスエットの力を借りねばならないというのも分かりつつあるのだろうと私は感じます。パルスエットが涙し、「マスターともう一度呼べる日が来た」という言葉がヨーンにもう一発、アイシャとは別のベクトルからヨーンにパンチを与えてくれたらなおのこといいんですけれども。
 その一方で、コーネラ帝国の話では、ファティマというものに対する否定的な考えも述べられます。確かに、炎の女皇帝の時代、マシーンメイスにはファティマが必要ではなかったのですから・・・。それほどまでに純血の騎士というのはすごいものなのだ、というのもここら辺のことを考えるうちにわかってきますね。
 確かに源流をたどれば、L-GAIMに登場したマシン、HMの頭部に生体コンピュータが搭載されている、というのを考えた瞬間からファティマというものが永野センセの中に生まれ、そしてL-GAIMにインスパイアされ、そしてセンセの中で色々と長年くすぶっていたであろう物語がFSSという形になったのだろうと私はぼんやり思っています。確かに鋼鉄やセラミクスなどのの箱に入った人工知能でも構わなかったわけです。でもやはり永野センセは、彼女らは美しくあれ、だが、哀しくもあれ、と思ったのでしょう。
 もうひとつファティマについて触れておかねばと思ったのが、「パワーゲージ・クリアランスはあるけれど、なによりも戦闘経験がモノをいうのだ」ということでしょうね。8巻のハルペル=インタシティの話で、彼女が「私が勝つことができたのは、今までの戦闘経験があったからだ」というのがあります。また、ジュノー戦で生き残ったパラーシャ、イアンとともにあちこちで戦ったオキストロの経験は、本来彼女らが持つゲージなどとは別に重要視されていると思いますね。騎士とて同じだというのもまた、初陣前のクリスティンとダイ・グの会話で分かります。いや、ファティマ・騎士だけではないでしょう。どんな一流の大学で学んだとしても、それを上手に生かし、様々な人々と交流し、困難をクリアして経験を積んでいかねば実質的な評価というのはされにくいものです。まぁ確かに現代日本人の場合、どうしても学歴重視のところがありますけれどね。でも、見る目を持ってらっしゃる方の前ではそれも通用しないことが殆どだと私はぼんやり感じますが・・・・。
 私から見れば、永野センセはやはりキャラクターや物語をかわいがり過ぎているなぁと思います。また、ニュータイプという雑誌に連載する以上、バスタードのような人のこころのダークサイドをバンと表に強く出した描写はなかなか難しいでしょう。ですから、読者としてはその物語の「美しさ」の影に語られぬ「残酷さ、哀しみ」などがあるのだというのをちょっとだけでも心に留めておくべきなのかどうか・・・とふと感じずにはいられません。あまりにも語るべきことが多いのに、このペースでは語りきれぬことの方が多いでしょう。永野センセはペリーローダンのように? FSSという物語を将来的に他のプロ・アマ問わず、開放したいという考えを語っています(95年2月号付録 クエッショニアより)。これが実現すれば、年表も含め、様々な設定という「縛り」はあるけれども、もしかすれば永野センセが語ることが出来なかったダークサイドについて書かれる方が現われるかもしれません。まぁ実際、同人誌で発表されている方もいらっしゃるかもしれませんが・・・・。残念ながら私は同人誌を手に取る機会が今は無いので何とも。ただ、そういうシビアな物語をお書きになってらっしゃる同人の方がいらしたら、是非読ませていただきたいと思いますね。本当。