小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

(おくやみ)

 以前から書こうと思っていたのですが・・・・「トリニティブラッド・シリーズ」(角川スニーカー文庫)の作者である吉田直先生がお亡くなりになられて大変残念に思っています。NT誌での広告で、トーラス柴本氏の美麗なイラストに惹かれて購入したのがきっかけなのですが、私の大好きなイタリア・ルネサンスに活躍した歴史人の名前を借りたキャラクター名にニヤリとさせられたり、読みやすい文章や詰め込みすぎない伏線とほどよいガジェットの置き方など、大変学ぶべきところの多いところもあり・・っていうか、非常に楽しみにしていた物語の一つでした。また、物語自体もかなり大詰めに入ってきていることから、大変残念としかいいようがありません。トーラス柴本氏のサイトのBBSにはお悔やみの書き込みがされていたり、吉田先生のご葬儀などについてのコメントがあったりして、それを読むとなおさらじーんとくるものがあります。
 「重力が衰えるとき」のジョージ・アレック・エフィンジャーがお亡くなりになった悲報をWEBで見たときも、作家としてこれからいろいろとチャレンジしていきたいことがあったでしょうにと同じように辛く感じました。また、敬愛する開高健先生は、「珠玉」という大変美しい「トロワ・コント(短い3編からなる作品)」を最後の最後のギリギリまで全身全霊の力を振り絞って書き上げられた後に亡くなられましたが、モンゴルでのチンギスハーンの陵墓の発掘を始め、あちこちの幻の魚と呼ばれる魚たちと1対1の大勝負をまだまだ続けていきたかったのではと思います。
 「人は必ず死ぬ・・・・」以前ご紹介した養老先生の「死の壁」ではありませんが、確かに死は避けることができません。ですが、好奇心旺盛であり、なおかつその好奇心によって発掘し、考え、あれこれとひねり、くしゃくしゃにしてはまたほどいたりしてある程度整えたモノを多くの方に見ていただければという気持ちは果てないと思うのです。年頭に「嗚呼ァ」と思っていた私も、未だこうやって箸にも棒にもかからないコトであってもだらりだらりと書き続けています。まして本職のかたであればなおのこと。
 本当に残念です。過去の大作家ならばまだしも、こうやって悲報を生で受け取らねばならない時はなおさら。しかし、それはそれとして受け止めねばならないというのまた事実。辛いですが、今はただ、ご冥福をお祈りいたします。