小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

世事多事:人と森と森の住人たち

 最近、熊やイノシシによる被害が多発しており、問題になっていますが、いわゆる「雑木林」が段々無くなってきているのと、開発などで熊が生息している場所のギリギリにまで人の生活圏が広がってきたこともこういう事態を引き起こした原因だと私は考えています。色々と考えさせられるアニメ、「平成狸合戦ぽんぽこ」の狸たちは、最終的に人間の生活圏に巧みに出入りして生き延びる道を選びました。しかし熊の場合、食事の内容が多種にわたるところは共通しているけれども、上手に人の生活圏に目立たないようにちょろちょろっと出入りしたりっていう訳にはいきませんよね。しかも、母子で行動している場合、母熊は大変神経質になっていますから。
 私は以前から、広葉樹が森と人にもたらす恩恵のすごさということについて色々と思うことがありました。杉の木よりももっともっと色々な面で森に住まう動物たちや人間に恵みを与えてくれるということを。また、土の中でもぞもぞしているミミズ、いやもっと小さな微生物から始まって、野ねずみやリス、兎などの小動物、そして彼らを食料とするやキツネなどの肉食小型動物や、カモシカや鹿を食料とする熊・・・・と一つの生態サイクルをバランスよく維持してきたということも。人が何世代も交代する間生きながらえてきた大きな広葉樹は力強い根を張り、例え多少の大雨が降ったとしても山の土をしっかりと抱え、土砂崩れなどを起こさないように頑張ってきてくれました。
 でも、この美しい程のバランスが取られた生態系の「輪」の要である広葉樹の森が少なくなってしまうと、エサの問題でそこに住まう動物たちのバランスが崩れ、様々な被害をひきおこします。人里にまで下りなくては生き残れなくなってしまうのです。そして、動物だって賢いですから色々と研究したりして、人が色々と柵をを作ったりしてもそれを迂回したりすることを覚えたり、飛び越えたり、脅かすためのアイテムに慣れてしまったりして被害は続いてしまいます。

 以前は建材になる木々を植え、管理する林業の人たちは沢山いらっしゃいましたが、今は輸入材の方がコストが安く済んでしまうことや、大変な重労働のために従事される方が少なくなってしまいました。そのために管理されない森が増えたこともこれらの問題を引き起こしているとも個人的に感じます。
 花粉症の方が「んもぉ! 片っ端から杉を伐採しちゃえ!」って叫んでるのを聞いたりしていますが、じゃあその後どうするの? というのもあります。例えそのあと広葉樹林にしようとしても、林業の知識のある方がきちんと管理を続けない限り・・・それも、それまで杉を育ててきたように何世代も何世代も時間を掛けて育てていかないと、バランスのとれた「いい雑木林」は帰ってきてくれません。ただの「不安定な土と岩の固まり」が残るだけです。

 木々の寿命は計り知れれません。だから、一度彼らの命を奪ってしまうと、彼らが一定の大きさに育つまで何年も何十年も何百年もかかってしまうのです。そして、「雑木林のの王様」たる広葉樹を中心とした動物たちのバランスのとれた営みが戻るのもまた同じでしょう。
 ただ、だからといってその「本来の森に戻していこうじゃないか」という行動を辞めてしまってはダメだと思います。人と森は切っても切れないものだと私は感じています。そう。水です。森があるから水があります。美しい森はすばらしい水を産み、護ってくれるのだと思っています。私は自然に関する知識が殆ど無いので素人的な意見しか言うことができませんが、でも、これだけは絶対本当の話なんだって思っています。

 昔々、日本の人は森や木々、自然自体を神聖視し大切にしてきました。ある意味、畏れさえ抱いていたと思います。今の日本人はそういう気持ちが薄れてしまってきていますよね。時代が進み、人口が増え、生活スタイルも産業も変わりましたから致し方ない事かも知れませんけれど・・・
 でもやはり水と空気無しでは人間を含めた生物は生きながらえることは出来ず、その二つに大変重要な役割を果たしている木々をどうか守って欲しい、気に掛けて欲しいと願ってやみません。