小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

世事多事:彼は何故・・・そして、ゆっくりとすすむということ、友情のこと、彼の地で血を流すということの意味

 「露の庵」にも以前少し書きましたが、私は「自らの器」を超えた行いをするということは大変良くないことだと思っています。また、そのことで周囲の方にご迷惑をおかけすることになるということは本当に避けねばならないことだと。
 でも、香田さんは少なくない人の制止を振り切り、踏み行ってはならない場所に行ってしまいました。オウンリスクを感じていたのかどうかいまとなっては分りません。しかし最悪の結果になってしまいました。
 しかも、彼を恐ろしい方法で殺害した人たちは、どうやらイラクの他の国からやってきた過激集団で、イラクにいらっしゃる宗教指導者の方もネゴシエーションするパイプがないという状態だったそうです。多分、その宗教指導者の方々も胸を痛めていらっしゃるのではと私はぼんやり思います。
 コーランを私は読んだことはありません。でも、むやみやたらに殺人をすすめるようなことが書いてあるとは信じたくありません。厳しい自然環境の中で生き残るために、お酒を飲み過ぎたり、過度の美食や、見栄をはることを慎むような教えが書いてあるのではと思います。私の大好きな小説、定金伸治さんの「ジハードシリーズ:ASIN:4087476154」やJ・A・エフィンジャーの「重力が衰えるとき (ハヤカワ文庫SF)」を始めとした3部作(ハヤカワSF:絶版)、その他の歴史の本を読んだりすると、かつてはイスラム世界は交易の中間地点でもあったことから、様々な文化が入り、それらの文化に対して結構柔軟に対応していたと思います。けれども近代に入るにつれ、多くの欧米の国々の思惑などや戦争に巻き込まれ、かたくなになってしまったのかも知れないと私は考えています。

 一部の人たちは、自衛隊の撤退を声高に叫んでいるようですが、イスラムの世界は以前から日本人の私たちとは時間の感覚やビジネスの感覚がまるきり違います。ゆっくりゆっくり、じわじわとという感じですし、同族意識がとても強く、交渉ごとにも独自の手順があります。ですが、ねばり強く交渉しつつ、サマーワの人たちを雇用して町の様々なライフラインや公共施設再建をすることで、現地の人たちのこころを少しずつ動かして行っていると私は信じています。最初はどうしても準備で支援がなかなかうまく進まなかったかもしれません。また、現地の方も困窮極まっていたために、自衛隊の支援活動の遅延にイライラしていたと思います。でも、現地の方を雇用して、現地の方と学校? 再建作業をしている映像を一寸前にTVで見ましたので、この流れが上手に動いていけばきっとサマーワの人たちは、少しずつ自分たちと自衛隊の人とともに町がかつての姿に戻っていくことを喜んで下さると思っています。とっても、とっても時間はかかるでしょう。でも、今止まってしまったら今までのことが全て水の泡になってしまうというのを分って欲しいと思います。 
 かつて・・・明治23年にトルコの軍艦が日本にやってきたとき、その帰りに大しけにあってその軍艦は難破してしまいました。多くの乗員が亡くなられましたが、軍艦が難破した付近に住んでいた方は言葉も何もわからなかったけれど、一生懸命救難活動をし、その時に救われた方々の看病を手厚くなさいました。このことについては「google:トルコ 軍艦 難破」で出てくるサイトに詳細が載っています。それから時がずいぶん流れました。けれども、トルコの方はその時のことをずっと忘れて居ません。むしろ私たち日本人のほうがこの事件について知らない方の方が多いかもしれませんね。
 今は確かに大変かもしれません。けれどイラクの国が落ち着いて、サマーワを逃れて離ればなれになった親子や夫婦、おじいちゃんおばあちゃん、親族が自分たちの故郷に戻り、そして「遠い日本から来た人と一緒に学校とかさ、立て直したんだよ」というのを聞いて、日本のことに対して少しでも好感を持ってくれたらいいのにって思います。そしていつか、日本の一般の人がサマーワを訪れることがあったとき「あのときにさ、日本の自衛隊と俺たちで町が元に戻ったんだよ」とおっしゃって下さったら、そして安心してサマーワの町を歩けるようになったらいいなって思います。そして、あのトルコの軍艦の悲しい事件のときに不思議なご縁で二つの国が結ばれたように、せめてサマーワの人たちと日本の人たちが手と手を取り合えることができればと心から願ってやみません。

 そして、米英がでっかい爆撃で民間人さえ巻き込みながらテロリスト集団を叩きつぶすという方針を考え直し、穏健派のイラクの宗教指導者の方やその他のイラクの人たちに彼らテロリストにイラクから離れてもらうことを交渉してもらえるようにできないかなって個人的に思います。とっても甘い考えかも知れません。しかし、いくらテロリストが民間人の住む場所に隠れ潜んでいるからといって民間人の家ごと吹っ飛ばすようなことはやって欲しいとはあまり思いません。イスラムの人たちにとって、敵に血を流されたということは机上の交渉で賠償とかの問題が片づくことではなく、敵の血を流さねば収まらないほどの事なのですから。
 とはいえ・・・イラクの人が自分たちの町の治安を守るために警察官になろうと受付事務所? のような所に行こうとするとそこを狙って自爆テロなどが行われる今、一体どうすればイラクの大地に血が流されることを止められるのでしょうか。
 ただ、今の米英のやり方ではそれは無理だということだけは、個人的には強く感じています。