小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

形影相憐:戸籍

 上記からの流れ。今の姓に直すためにそれを証明するものが必要だろうから、ってことで旦那と結婚したときに取った戸籍謄本をガサゴソと発掘。両親が昭和一桁世代だから、っていう訳じゃないけれど、なんかお金にからむこととか、それ以外でも大事そうな書類とかなかなか捨てられないんですよね。そんなわけでガサゴソと書類入れをあさっていると、母が亡くなった後、遺産がらみで使った戸籍が出てきました。家族4人の名前が書かれている、「一家」というものを書面で記してあるもの・・・死に別れても、遠くに離れていても「一家」が確実に存在していたことを証明するものです。それを見てまた思い出したことがありました。
 郷里にいた頃、司法書士の先生の所でパシリや雑務のバイトをしていました。その中で遺産相続がらみのお仕事のために、戸籍を整理していわゆる「一族の樹」とも言うべき、家系図のようなものを作成することもありました。それを作成しながら思ったのは「一人の人間が生まれるにはこれだけ沢山の人が関わって居るんだな」っていうことでした。
複雑なお仕事になると、直系の方だけでなく、そのご親戚やご兄弟の方などもたどっていきます。そうなると、それはちいさな歴史をたどっているような感じになっていきます。戦時中は多くの方がご存じのように、旧満州へ開拓に行かれた方が沢山いらっしゃいました。また、戦争が激化すると多くの方があちこちの戦場へと出征されました。たった一行、「〜で死亡」と書かれていても、私が知っているちょっとした歴史のお話と照らし合わせてしまうと、その一行にも重みがでてきて胸をそっと押さえたりしました。歴史の教科書では決して教えてくれない、ナマの歴史がそこにはあるのだなと。
 そうそう。ごくたまに「自分史」のためにご先祖様やご先祖様のご兄弟などの戸籍謄本を取って下さいと司法書士の先生に頼まれる方がいらっしゃるようですが、基本的には遺産相続などのお話が絡まない限り、古い戸籍をとることはできないのです。戸籍の歴史についてGoogleで検索されるとおわかりになると思いますが、昔の戸籍は身分差別などについて記してあるものがあり、人権やプライバシーの問題から制限が「そっと」かかっているような感じです。戸籍のデジタル化なども、そういう「あまりよろしくない情報」を多くの人の目に触れさせないようにとの配慮からかもしれませんね。また、明治時代のとっても古い戸籍については一部の自治体では廃棄されているケースがでてきていますし。
 そんな訳で、こういうお仕事に関わらない限りこういう体験をすることはできないので、色々と大変だったお仕事ではありますが、色々と学ぶことが多かった、貴重な経験をさせて頂いたお仕事でした。仕事柄の守秘義務があるので詳しい話はできませんし、上記の理由もあってこういう体験をする方はごく一部の方だけかも知れません。ただ、皆さんひとりひとりにが生まれるまでに、世の中に広く伝えられることはないかもしれないけれども、必ず「歴史」というものがあるのだと知って頂ければとちょっと感じて書いてみました。