小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

(読み直し編):三国志 1 (講談社文庫 よ 1-15)

 引っ越しの後、とりあえず順番とか考えずに片っ端から本棚に本をぶっ込んだため、いつもは奥の方に隠れている本などが最前列にあったりします。そして、ふっと気になって三国志を手にとって久方ぶりに読み直しました。ううむ・・・物語的にやはり面白いというのもさることながら、吉川先生のその文体のシンプルかつ読み手を惹きつける魅力に改めて感服した次第です。ハリウッド映画的・・・って書いてしまうとハリウッド系の映画のファンの方に怒られてしまいますが、ヒーローと敵が明確になっているというわけではなく、誰もが己の信ずる道を進み、時に厳しい選択せまられ苦悩し、またあるときは敵であってもその武勇や才を惜しみ、慈悲をほどこすという姿に、なるほどこれだからこそ長々と多くの読者に愛される話なのだなと感じます。また、近代戦争の手法がああですから、なおさらあの「名乗りを上げ、得物を輝かせ、一陣の嵐が吹き荒れるごとく敵陣を切り裂く」その姿にあこがれるのかもしれませんね。今では絶対に成すことができないからこそ。
 でも、三国志を読んで思うのは、一代の栄華は一代限りということでしょうか。英傑の子は必ずしも英傑ではなく、例え亡き君から仕えている才ある将がいたとしても、後継者が暗愚であればあっというまに城は崩れ去るというはかなさかと。また、例え君主が英邁であったとしても、周囲の将が愚鈍であれば乱れてしまうというのもありますね。こういう意味では歴史は今でも通じる様々な教訓を伝えてくれているよねと思わずにはいられません。が、温故知新という言葉もあるように、昔から変わらず、大切にしなければならないこともありますが、明日の為に色々と模索し、新しい考えなどや意見にもしっかりと耳を傾けてよくよく吟味することも大切ですよね。
 まあ、そういう堅苦しいことは横においておいても、長々と愛される小説であることには間違いないと思います。