小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

凡桃俗李:水

 かなり前に亡くなった親戚の伯父さんの話。
 その伯父さんはお酒が飲めない人。自分の郷里に来ると、お茶かお水しか口になさらない。だけど、自分が子供の頃、「いやあ、水がうまいところはいいねえ」と、コップをもって何度も頷いてらっしゃった。ごく普通に蛇口からの水道水だったけれどね。
 自分が大人になる頃には水道水もさほど美味しくなくなってきたというか、家が古くなって配管が駄目になってきたせいもあるのだろうけれど、イマイチな感じに。だが、同じ都道府県にあるけれど、もちょっと田舎に行ったところにある友達の家の水道水は夏でも冷たく、美味かった。別の知人の家では、井戸水を自治体の検査でOKもらって生活用水につかっており、そこの水も美味しかった。ちなみに、その知人の家の付近には山からの湧き水が流れている所もあって風情があり、夏は蛍が飛び交う非常に良いところだった。吉田兼好が「わびしけれどもなむ云々」と思うだろう、心地よい場所とはこういう所なのだろうね。多分。
 20歳の頃の大阪の水はひどかった。住んでいた建物が築20年の10F建てのボロビルだったせいもあると思う。朝、歯磨きをしようとすると「うっ……」って顔をしかめてしまう。沸騰ポットで使うお湯は蛇口の水を使っていたが、生で飲む水は我慢出来ずに、「なんで水を買わなきゃならんのだろう?」と思いつつ、「六甲の美味しい水」を時折買っていたと思う。1.5リッターで、今のようなペラペラなペットボトルではなく、今よく見かける液体洗剤のような、取っ手があるプラボトルに入ってて、かなり高かったような記憶がある。大阪3年目にはある程度大阪の水道水に慣れたか、引っ越した物件が良かったのか、社会人として過ごした時代は、あまり購入した記憶は無い。
 その後、郷里に戻ったが、今度はミネラルウォーターの銘柄が増え、欧州へ行ったときにエビアンヴィッテルを知り、「ミネラルウォーターを飲む」事が自分の中で普通になっていった。同じ水でも、水道水とミネラルウォーターは別物になったという訳。エビアンは今ひとつ好きになれず、ヴィッテル派だったが、その後ボルビックを知り、そっちに移動した。「しかし、ガス入りミネラルウォーターがないなぁ」と残念に思っていた。だが、こちらも後々色々な製品が日本に輸入され、今では飲料メーカーが扱う事で安価でコンビニやスーパーで手軽に手に入るようになった。一番のお気に入りはサン・ペレグリノだが、少々高いし、近所に売っておらず、Amazonで購入するしかない。一時買っていたが、ガスが抜けていて返金してもらった事がある(商品はそのまま消費して下さいとの事)ため、その後Amazonでは購入しなくなった。悩んでいた折、やっと居所近くのスーパーがゲロルシュタイナーを扱うようになったので今ではこれをメインに買っている。コーラとかを飲まない自分なので、炭酸系=ガス入りミネラルウォーターなのだ。唯一の例外はウヰルキンソンのジンジャエールだけど、これは酒の量販店か飲み屋に行かないとムリ。
 自分は今、大阪のスーパーにある浄水器で水をもらって(正確には、500円で容器を購入すると何度でも浄水器から水を供給してもらえるというタイプ)、お茶や製氷に使ってる。スーパーに買い物に行くときはその容器を持って行き、ゲロルシュタイナーや調整牛乳も買って、マジで水分だらけなエコバッグを提げてえっちらおっちら帰ってくる。蛇口には東レ浄水器をつけていて、うがいをしたり、お米をといだりするときは(最初の一回目の水と、炊飯するときの水はスーパーの水を使う)、そっちを使う。
 また。前居所の眼科や大阪でお世話になっている精神科や整形外科、調剤薬局にはウォーターサーバーが置いてあるけれども、家庭でも置いている人がソコソコ居るらしい。聞いたところによると、冷水のみならず、温水も利用可能な機種もあって、なんとまあ便利な時代になったものだと思った。ウォーターサーバーといえば、ハリウッド映画やアメリカの刑事物とかで、ぬるいタンクが上についてるっていうイメージしかなかったけれども。
 子供の頃は水でここまで色々と考えなきゃいけない生活を送らねばならないとは思いもよらなかったけれど、あの伯父さんのヒトコトを思い出すと、ああ、やっぱり人間にとって美味い水というのは大事な事なのかもとも思う。