小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

今月のファイブスター物語/FSS/F.S.S.:ガーランドのジレンマ

 心身の具合が悪くてなかなか続きが書けずにいたら、もう7月になるという頃に。わはは
 ◆モラード博士
 モラード博士は本当、いいおっちゃんになってると感じます。エストを作った頃のりりしい青年ガーランド(単行本10巻103p2コマ目)と同一人物とはとても思えませんけどね。けど、モラード・ファティマ達の元気っぷりを見ていると、この父ありて娘ありという気がします。
 確かに「技術者」として開発研究していく部分、自分が創り上げたファティマ達に対する深い思いはモラードもバランシェもありますね。ただ、方向性がちょっと違うなと思うのです。モラードのガーランドとしてのスタンスは、単行本9巻「ビルドの右脚」の中と今回で、バランシェについては5巻の「アドラー2629」やその後のバランシェとソープの最後の対話に描かれています。それら読むと、自分としては、バランシェは、9巻184pの炎がマグダルに語った言葉にもあるように「ファティマがファティマとして自らの運命を切り開ける力を持てるように、そして、人類には手が届かないかもしれない遠い未来への使者になれ」という方向性、一方のモラードは「ファティマとしての生きる日々が少しでも幸有るものに」と思うのです。ウリクルが亡くなった後にコーラスIII世と会話したときも「あれも幸せだったんだ。いい夢をみさせてくれた」と言っています。確かにその後鳩ラキに出会い、モラードの中に何らかのターニングポイントはあったと思います。それでも「なるべく長生きしてくれよ、いいマスターと出会い、ファティマなりの幸せを掴んでおくれよ」という願いを込めて育成するモラードのスタンスが変わるとは思えないのです。
 タワーの育成も、確かに特殊な経緯で始まったと思いますが、アトロポスクローソーのように女神のような視点から人々を見守るというのではなく、人と同じ視点で人の世界を見続ける観察者……タイ・フォンが観察しているのとは別の部分を観察していって欲しいという願いから来ているのかもと自分は思うのです。そう、詩女に近い存在かも知れませんね
 ◆アウクソー、そしてミースのジレンマ
 台所とかではごく普通に振る舞っていますが、ガーランドの目はごまかせません。ミースは特に心配しています。愛する人の忘れ形見的な存在というのもあるでしょう。また、師であるバランシェのガーランドとしての研究データを彼女は見ているはずです。その研究の成果ひとつひとつが生命をもつバランシェ・ファティマ達であり、師の残した財産を泡のように溶かしてしまうのは忍びないというのは自然な事でしょう。
 バランシェなら、今のアウクソーをどう扱うでしょう? それについて考えるのは興味深い事です。
 それはさておき、アウクソー誕生のいきさつが非常に複雑であることは本編やデザインズ3で語られています。今回、それへの追加情報として、ツバンツヒが見抜いている「人工生命には人工生命体だけがもつ別種の”生存本能”があるのではないか」というのが出たのではと。バランシェはこの事をドラゴン達との会話や、カイエンの胚をクーンに移した時に得た情報で学び、その研究をアウクソー育成に生かしたのではないかと自分は思います。先述した9巻の終わりのアウクソーに関する説明にあるように、彼女はある意味天照帝に限りなく近い程強い生命力を持つ生命体とも言えます。が、その前に星団法でいくつも制限を課されたファティマでもあります。
 アウクソーはファティマ「でしかない」。しかし「特別なファティマである」……このことはあの館に集まったガーランド達には分かっている事でしょう。「特別なファティマ」の価値。だが、星団法を遵守することの重要性。ミースはその間で悩んでいます。そんなミースに対しモラードは二つの言葉を投げかけて、彼女のもう一人の師として彼女を導こうとしているのでしょう。「ガーランドは星団法を重んじ、冷静に判断、行動せよ」「だが、自らの思いや感情を全て無視するな」と。
 一見矛盾していると思われますが、ガーランドが作るのは「戦闘兵器」ではありますが「心を持った生命体」でもあります。人工的に作られた命であってもガーランドは彼らの「父・母」なのです。ファティマの使用目的については重々承知しているものの、やはり心を持った……それも繊細でピュアな心をもった生命体であることはガーランドが一番良く知っている筈です。それでも戦場へ送り出さねばならないのです。淡々と送り出すガーランドも居るかも知れませんが、あの館に集まったガーランドはそうではないと思いたいです。レーダーVIII世のようにドライに考える事は、対外的にそうコメントする事は出来ても、内心では難しいのではないのではと個人的に思います。
 また、モラードとしては、バランシェがファティマ達に未来を託し、モラードが「ファティマなりの幸せ」を願うように、ミースにも彼女なりにガーランドとしてのスタンスを持って欲しいと思ってもいるのでしょう。アウクソーへの対応を通じ、そして自らの子宮に宿る命を通じ、彼女はガーランドとしての道を本格的に歩み出すのでしょうね。
 それにしても66pのアウクソーの美しいこと。ナガノセンセはこういうシーンの時、殆どと言っても良いくらい花を背景に描きますよね。こういうとき、少女コミックからの影響の大きさを改めて感じます。また、縫い目をきちんと描写することで、ジョーカーの服では一般的な無縫製成形型? の服とは異なる、手作りのすばらしい衣装を身につけていると言う事も。あと、やっぱり定番のプリンセスライン。確かにファティマのツルペタな胸部骨格を考えると、プリンセスラインの方が似合うかなと想像します。
 なお、アウクソーが「勘当」されたのは、おひろめに出せないからだと思います。カイエンの為だけに育成されたのですから。天照帝の所へ送る形にされたのは、星団法であーだこーだ追求されたとしても、陛下の権力ならそれらからアウクソーを守る事が出来るからではと。「勘当」というネガティブな単語ではありますが、アウクソー誕生には複雑な事情がある故、そう処理するほか無かったと思います。
 ◆ガーランド達
 ジンク博士、いいですねぇ。アイシャと同様、余裕のあるお姉さん的なキャラ。鉄の女的なイメージのあるコークス博士も今回は友達と寛いでいる感じがします。勿論、モラードと同様、ミースを暖かく見守っている一人でもあるからでしょう。
 桜子のセリフ「くやしいけれど法は法よ!!」には、先述した、ガーランドが内に秘めている悲しみみたいなものがあります。桜子もまだ、ガーランドとしてのスタンスがしっかり固まってないのかも。12巻巻末でちびログナーにも指摘されていますけれどね。それと、モラードがエストのファンタム・マネージメントについて語ったとき、「エストはヨーン君のこと…… 覚えてないの?」と愕然となります。ヨーンが好きな彼女としては、やっぱり彼の願いが叶って欲しいのでしょうね。でも、いつか……多分、ガーランドとしての彼女の部分がその悩みに落とし所を見つけると思いたいのですが。
 イカズ後家の所でミースが「それ、私なんとなく分かるような気がしまス」というセリフと、その時何を飲んでるの? というのが2ch本スレで話題になってたのを見ましたが、一度好きになった人がものすごいインパクトがある人だったら、早々普通の人じゃ満足できないと思います。彼女が好きになったカイエンを超える男性がいるとは思えませんからね。あと、ツバンツヒが来る前は、ミースはカップでお茶のようなものを飲んでいたようですが、ツバンツヒに何かお出ししようとサイドテーブルに行っています。その時にジュースかアイスティのようなものを自分用に作ったのではないでしょうか。アルコールでは? という書き込みもありましたが、タンブラーですし、ソフトドリンクだと自分は思います。
 ◆ネ? 色々面倒くさいでしょ?
 このセリフいいですねえ。
 設定イラストが出てから本編に登場するまで何年もかかるキャラが居るというのに、彼女は本当サックリと。無論、名前だけはかなり前から出ていたので、デザイン的にはかなり前に出来ていたけれど、カリギュラ関係ということで表に出なかっただけかも知れません。今回、GTMガーランド姿で登場とのことなので、リブート7巻によると170cmとか。映画GTMでも同様、今回もシャン、とかキラッという不思議な音を立てています。この音が、重合人間特有のものなのでしょうか。ああ、もう一度映画GTM見たいですねえ。あの音がどうだったか確かめたいです。歳のせいかすぐ忘れてしまうので。
 彼女がこの館へやって来たのは、バッハトマに出入りしているカリギュラ関係者からアウクソーの話を聞いたせいなのでしょうか。しかし、アウクソーが特殊なファティマであることをバッハトマ側が知っているとは思えません。となると、カリギュラの情報網というのは、ダイバーズ・パラギルドよりもスゴイということなのでしょう。12巻で、イーヴィー・3がアルルの会話を立ち聞きしてもいますし。
 さて、彼女が好奇心だけでアウクソーを見に来たとは思えません。モラードが「何が目的か分からんが」と言っていますが。それについては8月号以降で明らかになるでしょう。トレーサーEX.2では「モラード博士よりショウメの探索をも依頼される」とあります。モラードがショウメについて語る時まで待ちましょうか。
 非常に気になるのは、彼女の襟の素材。ウサギの毛のように細い毛並みですよね。でも、そういう立体的な模様が毛皮でできるものなのでしょうか。ご存じの方がいらしたら教えて欲しいなと思いますし、ナガノセンセ、デザインズ4で解説入れて下さいよ。
 ◆ハイトの決意
 誰かのために生きる……それは生きがいです。その対象は愛する人だったり、家族だったり、尊敬する人達だったり様々だと思います。F.S.S.の世界の騎士達だと、ブラフォードやカイエンの描写がありましたね。ハイトもまた、「誰かのために生きる」という生きがいを見つけたのでしょう。けれどやっぱり「ギリギリレベルの騎士」。あっさりとツバンツヒにノックアウトされちゃいます。2chのスレだと、この後改造受けちゃうとか色々話がありましたが、普通に治療してもらうだけじゃないでしょうか。モラードが若きコーラスIII世を治療したように、ミースがハイトを治療するかも知れません。ヒトメボレしてしまった女性が傷ついた自分をいたわってくれる……そうであれば、ハイトの中のミースへの想いはますます大きくなるでしょう。ミースは後々、アウクソーと共にハスハントの王城に軟禁されることになっています。今の時点では、何故そのような事が起きるのか分かりませんが、ハイトはその時もミースと共にあるのでしょうか。「ギリギリレベルの騎士」であっても、精一杯ミースを守るために困難に立ち向かおうとするならば、その姿は読者の心に響くのではと思います。
 ◆追記:映画GTMのDVDやブルーレイが出ない訳
 映画GTMは「4K解像度 - Wikipedia」で制作されています。一般の映画よりもデータ量が多いため、ブルーレイでもそのデータを保存することは出来ないと聞きます。そのため、ソフトを販売する事が出来ないのです。見る事が出来なかった方にとっては非常に残念なことですし、自分自身、もう一度見たいと思っていますが、ブルーレイを超えるデータ保存メディアが登場しない限り無理だと思います。また、ナガノセンセ自体「あれは映画館で見て欲しい」という思いがあるので、なおさら難しいのではと。時々でもいいので、再上映会をやって欲しいですね。最近「「花の詩女 ゴティックメード」ユナイテッド・シネマ豊洲で復活上映なるか!? | ドリパス」が提案されましたが、見事上映会開催、しかもチケット完売となりました。大阪や他の都市でもやって欲しいなと思います。