小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

世事多事:歴史と、君が代・日の丸

 もうひとつ気になったのが、前述の「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム - Wikipediahttp://p.tl/52Ga」の中にあった、江藤淳氏の著作からの引用、

大東亜戦争がみじめな結末を迎えたのは御承知の通りです。通学の途中にも、他の場所でも、あの憎い米兵の姿を見かけなければならなくなりました。今日の午後には、米兵が何人か学校の近くの床屋にはいっていました。/米兵は学校にもやって来て、教室を見まわって行きました。何ていやな奴等でしょう! ぼくたち子供ですら、怒りを感じます。戦死した兵隊さんがこの光景を見たら、どんな気持がするでしょうか」(9月29日付)

 昭和20年のこと、とあるが…… 自分がかつて良く読んでいた(しかし、もう手元にはない)毎日新聞社の「一億人の昭和史」のモノクロ写真に写っている人々を見ると、そういう感情というよりも、「衣食住と仕事」を求めて集まったり移動したりする人々、タバコをくわえていぶかしげな視線を見せるか、衰弱してうつろな目をしている子供達等々……兎に角、1日1日生きることに必死で、国家、国体がどーのこーのということを考えているのはきっとほんの一部の人達だったのではと思った。
 GHQ的には「修身、日本歴史及ビ地理停止ニ関スル件:学制百年史 資料編 [一 教育法規等 (一) 連合国軍最高司令部指令] :http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpbz198102/hpbz198102_2_033.html」で

一 昭和二十年十二月十五日附指令第三号国家神道及ビ教義ニ対スル政府ノ保障ト支援ノ撤廃ニ関スル民間情報教育部ノ基本的指令ニ基キ且日本政府ガ軍国主義的及ビ極端ナ国家主義的観念ヲ或ル種ノ教科書ニ執拗ニ織込ンデ生徒ニ課シカカル観念ヲ生徒ノ頭脳ニ植込マソガ為メニ教育ヲ利用セルニ鑑ミ茲ニ左ノ如キ指令ヲ発スル

 と、ピリピリしていたようだけれども、占領時期は終わり、時代は流れ、情報が溢れかえる今、太平洋戦争と君が代・日の丸を結びつけて(それもどれくらいの強さで)考える人はどれくらい居るのだろうかと。
 個人的には、戦前のようなものではない、「自分は今の日本に暮らす一人の日本人として今の日本が好きだから」国家を歌い、国旗に一礼したり敬意を示す人が少なくないのではと思うし、自分もそうだ。
 といっても自分は歴史を忘れたくない。「映像の20世紀」や他の記録映像、写真、記事、文章…… 戦争が起きた。戦場で死んだ。軍人に虐待された。家族を失い、家も財産も失った。焼け野原で呆然とした。傷病で苦しんだ。俘虜生活。軍事裁判。戦犯。軍国主義言論統制……何があったかは、歴史を紐解けばすぐに出る。君が代・日の丸の事を考えると精神的ストレス等という話があるけれど、その方々は記録映像や検閲でアウトになった報道写真の本を見てどうなるのだろう。
 教師や指導者であるなら、歴史という事実を率直に受け止め、自らの思想を入れず、事実をありのままに教えるべきなのではないだろうか。
 また、彼らは欧州の歴史をどう感じているのかも気になる。国家と国家が互いの首や四肢に牙をたてて肉を食いちぎり、血みどろになり、何年も何年も、国の名前が変わり、施政者が変わっても戦いをやめなかった、そして今も戦い続けている所がある欧州の歴史を。また、中国の長い歴史もそうだ。あそこも統治者が変わる度に色々なことが起き、人々は国について複雑な思いを抱いているという。国共内戦大躍進政策文化大革命…… ソ連も…… ああぁ、国家同士の戦争でなく、国家の礎になれとむち打たれて働かされ、思想を縛られ、傷つき死んでいった人々は戦争での数とそう変わらないかそれ以上かもしれないと見たような気がする。
 
 以前も書いたけれども、君が代・日の丸を嫌う人達よ、「あなたにとっての国歌・国旗はなんですか?」と問いたい。「あなたが海外に行って、国歌を歌い、国旗を掲揚するよう頼まれたらどうするのか」とも。
 きっと大抵の人は「無い」「そんな機会も無いからどうでもいい」と答えるかもしれない。だが……一国の国民として生きるなら、国歌も国旗も無くて言いというのはあまりにも寂しくはないだろうか? それとも「海に囲まれた日本列島に住む日本人」として、欧米のような移民が多かったり多民族国家だったりしない「日本人教」みたいなものの上であぐらをかいているのだろうか。
 自分の周囲ではその答えは見つからない。