小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

ファイブスター物語/FSS/F.S.S.:そろそろ、机の端に置いてるNTの量がはんぱなくなってきて。

 ◆このバカ娘!
 さーて。
 自分は10年近く前に子宮筋腫で子宮を摘出したため子供が産めない身体になりました。自分はそれ以前から他の病気を抱えている事もあり、「自分の面倒さえ見切れぬ女が子供を育てる事は到底無理」と唇を噛みながらも割り切らざるを得なかったのですが、子宮を摘出した女性の中には「女じゃないと言われた」とか「女性としてのアイデンティティを見失ってしまった」と深く悩んでらっしゃる方は少なくありません。自分でさえも「ああ、母が今の自分と同じ歳の頃、母は子供達の面倒で日々てんてこ舞いだった。そして、末子の変な娘をどうしたものかと悩んでいたのだろう」と考えるのです。先述したように一度割り切ったものの、やはり自分に子供がいたら、今どうなってただろうと思う事はあるのです。男の子だろうか、女の子だろうか? どんな子供だろう? 本が好きかな? 一緒にゲームして担任に一緒に怒られるのかな? とか。そういう事が頭によぎる回数が歳を取る毎に増えてきたなぁと感じてます。「頭では分かっているけれど、気持ちは……」と、ね。そんなわけで、子供を産み育てる事について、自分は複雑な思いを抱いています。ですから、今月号の最後の方を読んで複雑な心境になりました。とても。
 女性にとって子供を産み育てるということ、実際に産み育てるだけでなく、出産育児について考えることすら大きな問題なのだと思うが故です。こういう身になった今の自分であっても。
 自分語りはこれ位にして、と。
 フンフト、詩女というよりも、酸いも甘いも知った「世知に長けた大人の女」として乙女のクリスに上から目線で言い切ります。戦場で戦うだけが帝国の為に戦うという事ではない。帝国のために騎士を産むのも戦いなのだと。
 乙女のクリス。そりゃあ怒りますよ。愛する人と結ばれ、その結果として子供を授かるのが自然なことだと思っている……けど、本当に愛する人と結ばれる事は許されない。だからこそ、愛する人のために騎士として戦おうと決めたのだから。好きでも無い男と手を繋ぐのさえ嫌でしょうね。それなのに子供を産む目的の為だけに男と寝ろと言うのか、と。前回も使った表現「クリスのヤカン」が沸騰ですね。
 ビィ家の娘……剣聖も出したサヤステ家とともに帝国を支えたマーカス家の分家。例え凶状持ちであったとしても、クリスの「血」が重要だとアドー王は言います。一石二鳥だとも言いますが、重視しているのは「血」であり、領地を与える事で臣下を懐柔し従える王と同じように、元老院の貴族達にクリスとの臥所権を与えることでアドー王は権勢をより強くしたいのだと自分は考えます。
 もしクリスが凶状持ちではなく、バーバリュースが存命ならばこのようなことは出来るわけないでしょう。バーバリュースやレーダー8世が手を尽くして嫁ぎ先を決めるなり、彼女の意思を尊重して嫁入り仕度をしたに違いありません。騎士としての役目を果たしつつも、恋をしたり多くの人達と触れあったり、そして美しい花嫁衣装を両親に披露したでしょうに。
 ですが今は後ろ盾が居ないどころか、自分のことすら自分で決める事ができない。さらには、泥水を飲めと言われたら飲まねばならぬ存在なのです。それでも、それでも……彼女はヴィ家の娘であり、騎士です。星団でも特に誇り高いフィルモアの騎士です。目の前で先月号のような事を見せられ、さらにはこのような仕打ち。刀の鐔に手が行ってしまうのも無理からぬ事。
 マグダルとデプレが「山椒大夫」の物語のように……というのは前々からセンセが触れていましたが、クリスがこういう扱いをされそうになるとは想定外。これが多分「純真な女性読者が怒るだろう」とされていた事なのかな、と個人的に感じます。
 でもちょっと待って。例えクリスが意に沿わぬ男と臥所を共にしたところで、妊娠した子が騎士になるかどうかは分かりません。
 騎士を親に持っても騎士の素質を持った子が必ず生まれる訳ではないことは物語の中で語られています。単行本7巻のヤーボとアイシャの会話でヤーボが「最弱の染色体をもつ騎士同士で子供が出来るなんてめったにないのよー」と言っていますね。また、その逆パターンとして、騎士ではない両親の元に生まれたヨーンがいます。
 デザインズ2の92pにもこの件について1p丸々文字で埋めて説明があります。「騎士の力はジョーカー星団の人々のすべての遺伝子に行き渡り、劣性遺伝的な要因から20万人に1人という確率でしか生まれてこないとされている。しかし、なぜ騎士はこのような不安定とも言える発生率なのか? また、なぜジョーカー科学で人工的に騎士を生み出すことができないのか? さらには騎士の親から生まれた子供ですら確実に騎士となってうまれてこないのか? この仕組みをわかっているのはマイトたちだけのようである。そのマイトたちですら騎士を人為的に作り出す事はできない。この仕組みはすべて炎の女皇帝が仕組んだことで、超帝國の騎士の発生のシステムに由来している。(中略:ここで女王蜂が何故生まれるかについて触れている)星団歴の騎士とは受精卵の発生後何らかの要因によって生まれてくるものなのだ。なぜならすべてのジョーカー人類は騎士となる遺伝情報を持ちながら非常に少ない確率でしか騎士とならない。この迷彩を炎の女皇帝は「乱数」、人の世で言うところの「偶然」に任せるプログラムとして後の人類に与えたということなのだろう。(中略)ジョーカー人の遺伝子にはこのわかりやすいスイッチが個人差と成長による時限スイッチなどに迷彩によって隠されているからこそ、騎士の発生が制御できないのである(中略)超帝國の純潔の騎士と言われるスバースの子孫達はこのスイッチが非常に入りやすい遺伝子を受け継いでいたということになのであろう。(中略)また、コーラス王家のみに現れる「長子は騎士の力をもって生まれてくる」というのもこの隠されたスイッチが確実にあるということなのであろう。第9巻でのボードの話を読む限り、この騎士を発生させる遺伝子プログラムは遅くとも成人前でなければならないようだ」
 引用が長くなっちゃいましたが、炎の女皇帝が、それまで独占的に……女王蟻が兵隊蟻を産むがごとく騎士を生み出していたのを止め、星団の人々の中に隠れたスイッチを仕込んだのでしょう。そのスイッチが入れば騎士に。入らなければただの人。そして、ごくたまに劣性遺伝要素のみ受け継いで生まれる子も居て、それがダイ・グの父のような……病弱だったり何らかの障害を持って生まれるということなのかも。
 でも、純潔の騎士の血を引いていたり、コーラス王家の事、そしてクリサリス家やコーダンテ家のように、強力な騎士を生み出す可能性が強い家というのはあるのでしょうね。スイッチが入りやすいという血筋。ヴィ家もそういう血筋だからアドー王が目を付けたのでしょう。ぶっちゃけ、そういう血筋なら数打ちゃ当たる、とね。失礼な話としか思えないけれど。
 ◆権力を振るう事
 上記の事を考えると、やはりアドー王がクリスとの臥所権を貴族達に売ることで自らの権力を強め、その貴族達の支援を受けつつ、ナカカラと中原の平定を何としてでも成功させたいのでしょう。システムカリギュラと手を組むことで払う代償がどのようなものであっても、帝国の歴史を変えた人物になるというのは、権力の座に就くだけで無く、その力を十二分に振るう事の快楽。それが、今月号の終わりのアドー王やティルバー女王の表情に見る事が出来ます。
 さて、67pの最後のコマ、シオの門番の真ん中の人物の手がGTMの手みたいですが、重合人間だからこういうことができちゃうのかな……というか、そもそも「重合」って何? って思ってウィキペディア読んだらますます分かりませんっ。
 「重合体 - Wikipedia」

 重合体(じゅうごうたい)またはポリマー(英語:polymer)とは、複数のモノマー(単量体)が重合する(結合して鎖状や網状になる)ことによってできた化合物のこと。このため、一般的には高分子の有機化合物である。現在では、高分子と同義で用いられることが多くなっている。ポリマー(polymer)の poly- は接頭語で「たくさん」を意味する。
 2種類以上の単量体からなる重合体のことを特に共重合体と言う。
 身近なものとしては、繊維に用いられるナイロン、ポリ袋のポリエチレンなどの合成樹脂がある。また、生体内のタンパク質は、アミノ酸の重合体である。

 ……ということですけどわかんないです−。
 ◆思い違い
 「あの耳飾りをもっている以上気になります」というのはフンフトのセリフでしょうか。そうであれば、フンフトはあのイヤリングの由来と意味する所をを知っているということですね。そうであれば、「このバカ娘!」の意味合いも変わってくるかも知れません。2ch本スレで見つけた興味深い書き込み。

121 名前:名無しんぼ@お腹いっぱい[sage] 投稿日:2013/12/10(火) 17:36:04.29
あの負けるなはすごいキーになってる気がするわ
フンフト様がダイ・グが本当に好きなら相手が皇帝だろうと世間の目がどうだろうと強引に押し倒して子供作ればいーんだよ馬鹿娘、って唆してるように見えなくもない
189 名前:名無しんぼ@お腹いっぱい[sage] 投稿日:2013/12/10(火) 21:57:47.59
>>121
あー、それヤーボが身籠った時にアイシャ話してたなあ・・・

187 名前:名無しんぼ@お腹いっぱい[sage] 投稿日:2013/12/10(火) 21:39:28.33
>>121
フンフトも慧茄も、真意はそっち(強引に押し倒せ)なのかもしれないな。

フンフトがクリスに言ってる台詞も良く読めば

あなたが帝国の「犬」と呼ばれることを認める「ならば」、
雌犬として望まぬ子を宿し生み続けることがあなたの「役目」。

そんなのイヤなんでしょ?
じゃあ自分のことを「犬」だなんて言ってはダメじゃない!
そんなこともわからないの?
このバカ娘!

という意味にも取れる。
そうだとしたら、それに続く最後のコマのクリスの「決意」すらも「思い違い」なのかもしれない。

慧茄の台詞「やっぱり…あれではだめですか…」も、せっかく真の王妃の証の耳飾りをあげたのに、その意味が全然クリスに伝わってないことを嘆いているようにも読める。

でもな〜、12巻の最後に「2人の花壇に絶対花が咲くことはありません」と断言してるからなぁ。

クリスに「咲かぬなら、咲かせて見せようホトトギス」とでも言わせたいのか?慧茄おばあさまは?

 「自分の意思を持つ事が許されぬ者」と自分で自分を縛り、自分の人生の道を切り開く事を諦めてしまったクリス。でも、もう少し彼女自身が心身ともに成長をしていけば、いや、今回の場合、凶状持ちのハイランダーという条件はあるものの、その中でもがき、あがき、悩んで否が応でも成長しなくてはいけないって事なのでしょう。慧茄は単行本12巻の終わりでクリスに伝えています「この耳飾りは片時もそなたを見捨てませぬ」。帝国、いや星団のありとあらゆる存在が彼女を蹂躙しようと、彼女の心を見守り続けるのだと。
 歴史を紐解けば、国家や家の為に意に沿わぬ結婚をした王族や貴族の女性の話は沢山あります。クリスがそんな女性のように、自分らしい生き方ができなくても、彼女が自暴自棄にならず、くじけない限り……かつてダイ・グが初陣前の彼女に語ったように、生き延びる事こそが彼女を見守り大切に思う人への最大の応えになるのだと自分は思います。
 自分は両親を早くに亡くし、兄弟と骨肉の争いをし、なんやかんやで転居を繰り返し、それ以外にも問題やトラブル、病気を抱えていますが、自分は生きています。今、ここで生きているという事実が大事なんだと自分は思っています。
 自分ではどうにもならぬ事で翻弄されるクリス。それでも彼女は生きる。そして、自分の心の中に名も無き草花のように強い「生き抜く心」を持ち続ければ、立派な花壇に花は咲かないけれど、ラーンへの道のに咲くあの花々のように、彼女が成した事が後々まで語り継がれるでしょう。そして詩女の記憶の中にも刻まれると思うのです。
 がんばれ、女達。
 ◆えっと?
 ……で、このところずっとフィルモアのターンなので、2ch本スレの書き込みの中には「主人公どこー?」とか「このままでは13巻にアイシャ様が登場しないのでは」という話が。ううむ。
 アイシャ様の件については、大体10ヶ月〜1年連載分が単行本になってると思うので単行本3巻の「ぶぇ〜〜〜っくしょい」の時みたいに、1コマだけでも無理矢理登場なさるのではと思ってます。
 ってことで、自分の境遇とかなんかからめちゃったら、だらだらっとした文章になっちゃったかも。水曜はネトゲがメンテの日なので、だらだらっと書いてたらこんな量に。うーん…… なんか空回りしちゃったかも。ぽてっ。