小料理屋さつき

かつて「はてなダイアリー」にあった「小料理屋さつき」をインポートしたもの+細々と。

WEBつれづれ:「空間の共有」そして「今の日本」

 GIGAZINE2007年8月28日のヘッドラインニュースを読んでいて、ふと気になって検索すると興味深いものが。
 8月28日は「1952年にジョン・ケージ(ウィキペディア:ジョン・ケージ)が作曲した無音の曲「4分33秒」が初演 されました。」とのこと。そこで、なにか画像がないかどうか調べていたら、ニコニコ動画youtubeからの転載かと思われる動画がありました。John Cage <<4'33''>> フルオーケストラVer. BBCの番組なのでBBCのオケだと思います。空間共有の緊張感がいいですね。どこがどういいかとか、批評家チックな言葉とかは全然必要がないと感じます。素直にこの4分33秒の間、自分の外と内に耳を傾けるだけでいいというのでしょうか。
 また、オケだろうが屋内外で一人だろうが、プロだろうが素人だろうが演奏できるというすばらしい曲でもありますね。
 「4分33秒」についての解説はウィキペディアにもありますが、個人的には「軽い黙想」に適した時間でもあるのではと思います。例えば、森を散歩しつつ、たまに足をとめて周囲に耳を傾ける時。バス停でふと日々のことを思う時等。
 私はひきこもって、騒がしい世間から離れており、雑念を自由に巡らせる時間を持っていますけれども、忙しい日々を過ごす方にとっては、何かきっかけでもなければそういう「こころを自由に羽ばたかせる」時間っていうのはなかなか取れないのかもしれません。あえて「4分33秒」を聞くという機会を作ることで、忙しい日々の中のちょっとした静かなひとときを過ごせたらいいのにと思ったりします。

 ウィキペディアの項目を見ると、なかなかに興味深い人物のようですね。京都賞を受賞したときのエピソードや、毒キノコを食べちゃって死にそうになったところとか、「思い立ったらガンとして譲らない」という部分があるようです。周囲の人にとってはハラハラさせられる人だったと思いますが、でもきっと、そんな頑固者であっても、既成のイメージにとらわれない自由な発想のすごさを目の当たりにできちゃったから、そういう部分は吹っ飛んじゃうのかも知れません。
 また、東洋思想に深い興味を持っていたようですね。日本に住んでもよかったのになぁと、ふと思いましたが、あることを思い出して、やっぱり駄目かもと感じました。正確な表現やお名前は忘れてしまったのですが、ヒストリーチャンネルの、番組と番組の間にある30秒程度のジングル? で紹介されていた、ある映画監督の言葉。「小津監督が描いた東京にあこがれて東京に来たものの、あの東京は既に失われてしまっていた」というもの。
 メディアやネットで情報があふれる国。東洋でも西洋でもない、ニッポニズムとしかいいようがない、日本の有様。どれも中途半端で、でもそれはそれで一つの形になっているように見える。ビルが乱立しつつ、そのビルのなかに老舗の名店が店を構え、田畑が広がる郊外にインターチェンジがあり、その脇にラブホテル。そんな現代の日本に、欧米人がなんとなーくあこがれているジャポニズム、古き良き日本を求めるのは難しいと個人的に感じています。
 まあ、ケージさんはもう亡くなってらっしゃるために、今の日本についてのご感想を尋ねるすべはないのですが。もしかすると、そんなゴッタ煮カルチャーな日本こそ、偶然を愛し、既存の枠を超えたい人にとっては面白味のある国に見えるのかもしれませんけれどもね。
 難しいですね。自分自身を一番知らないのが自分自身なのですから。日本人である私が、日本とは一体どういうものなのだろうと考えても、キチンとした答えが出ることはまずないのではと思うのです。